8 人気者の独白 ページ9
本当は、Aの目の前で『可哀想なシャオロンくん』として飛び降りて死んでやるつもりだった。
後悔だとか、怒りだとか悲しみだとか罪の意識にぐちゃぐちゃになりながらも、一生おれに縛られたまま生きていけばいいとか。Aが本当におれだけのものになればいいなと思っていた。
「Aさんは幸せに生きてな」とか、
微塵も思っていない綺麗事ですら、おれが、『可哀想なシャオロンくん』が言えばAは生涯それに縛られて生きるんだろうと思ったし、そしたらAは他の誰でもないおれだけのものになるんだと思えば、早く目の前で、一生のトラウマを植え付けるような死に方をしたくてたまらなくなった。
でも、あの時。可哀想じゃないおれを否定したAさんを見て、おれは心底がっかりしたんだ。
Aさんは、おれの全てを受け入れてくれる。
Aさんは、おれの中の絶対的な全て。
そんなAさんを、Aはいとも容易く否定してしまった。正直、かなりがっかりした。
Aさん、Aさんなら、Aさんに握ってもらった手で自らを慰めるような気色の悪いおれも、べしょべしょに泣いて縋るようなよわっちぃおれも、どんなおれだって受け入れてくれると思った。それなのに、Aは、自らの言葉一つで飼い殺せてしまうような『可哀想なシャオロンくん』だけを求めていただなんて、そんなの、とんだ裏切りじゃないか。
けれど、名前も覚えていないAさんのペットのうちの一匹がいじめの本元はAさんだなんて馬鹿げた突拍子もないことを言った時、俺は心底嬉しいと思った。他のどんな犬よりも自分が特別であることを誇りに思った。
だから、おれはどんなに期待はずれなAのことだって受け入れる。期待はずれなAが他のペット共から見限られても、おれだけは側に居続ける！
なんて素敵な御話なんだろうかと思った！
そんな可哀想なAを1人置いて死ぬだなんて可哀想なことはできるはずもない！かわいそう、ほんまに可哀想な、なんて可哀想な奴なんだろう！
きっと、おれの言葉一つですら殺せてしまうような弱っちくてみっともない心底駄目な可哀想なAを、おれはAを神様だと錯覚していた時よりもずっとずっと愛しく思った！！！！
だからおれはいった。
「おれと心中してください！」
汚いおれとAには、これ以上ないほどぴったりな愛を誓う言葉だと信じていた。
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雨蛙躑躅(プロフ) - ハトポッポさん» コメントありがとうございます。己の好きを詰め込んだに過ぎないのですが、そんな風に温かいお言葉をいただけて雨蛙はこれ以上ないほどの幸せものですね！読んでくれてありがとう！これからも雨蛙をよろしくお願いします！！ (4月14日 13時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
ハトポッポ - 最高です。苦しくなるような美しい世界感が大好きです。 (4月14日 0時) (レス) id: c3e1e2758f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年3月25日 20時
