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震えの止まらない手で、そっと地獄への扉を開けた。
多分、きっと、最初は教室とは沢山友達のいる大好きな場所で、シャオロンは教室へと向かう朝の時間が大好きだった。けれど、今は違う。
いじめ。言葉にすればたったそれだけのこと。
登校すれば机の上に花瓶に生けられた花が我が物顔で鎮座していたり、扉を開ければ黒板消しが降ってきて髪が白く染まったり。陰口がどこからともなく聞こえてきたり、時には居ないものとして空気のように扱われたり。
それだけのこと。言葉にして仕舞えば、それがどんなに酷いことか人には全く伝わらない。少なくとも、絶望感に死んでしまおうと思う程度には、シャオロンは何度も心を殺されていた。けれど、そんなシャオロンの気持ちを親身になって想像してくれる人間など、汚いこの世界には存在してくれるわけもない。可哀想なシャオロン。
かろうじて、Aに会えるという希望に縋り付くためだけにシャオロンは学校に通っている。
「おはようシャオロンくん」
「…お、はょ、う。Aさん」
健気にもシャオロンの机を濡れた雑巾で拭うAに、シャオロンは泣きたくなった。その机に書き殴ってあったであろう罵詈雑言をシャオロンに見せないためにAが朝早く登校して必死に油性マーカーを拭っているのをシャオロンは知っている。
優しすぎるAに、シャオロンは辛うじて現世に縛り付けられていたのだ。
あんな奴を助けるとか、Aさん優しすぎー。
困ってんのがわかんないのかなぁ、Aさんの優しさに漬け込むとか信じらんない。
「大丈夫、あんな言葉聞かなくていいんだよ。私がしたくてやってるの、気にしないで」
そう言って頭を撫でてくれるAは、きっと神様みたいに優しい。だから、周りの言葉も風景も、全部Aが塞いでくれる。A以外を見なくて済む。
Aがいればそれでいい。
そんなだから、シャオロンの首輪はいつまで経っても外れない。
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雨蛙躑躅(プロフ) - ハトポッポさん» コメントありがとうございます。己の好きを詰め込んだに過ぎないのですが、そんな風に温かいお言葉をいただけて雨蛙はこれ以上ないほどの幸せものですね！読んでくれてありがとう！これからも雨蛙をよろしくお願いします！！ (4月14日 13時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
ハトポッポ - 最高です。苦しくなるような美しい世界感が大好きです。 (4月14日 0時) (レス) id: c3e1e2758f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年3月25日 20時
