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Aは顔を真っ白にして突っ立っていた。


もういよいよ、自分を保てる手段を探すのも一苦労といったところだった。
あの日から、人前に立つことがなくなってしまった。


軍に入隊して4年半。


 当初の軍の中では、この国の男尊女卑が浮き彫りになっていた。男女の差を埋めるという気は微塵も感じることはなかった。女性は室内で事務仕事、軍服とは言えどまるで戦闘向きではない古い洋服を着、食事の準備をし、実技試験は申し訳程度のものだった。

本当に女性を戦いに出す気はなかったのだ。

 それでもAは、男女の差をものともせず、毎日毎日訓練に励んできた。去年、幹部にまで上り詰めた。だから、認められていると思っていた。馴染んでいると思っていた。この軍の一隊員として、胸を張り勲章を太陽に煌めかせているのだと。


そう思っていたのだ。






「俺また後方部隊だよ。いい加減前線部隊入りてェんだけどな」

「いやいや、しょうがねェよ。つまんねえのは女がやってくれてるんだからよ」

「でもA隊長幹部になっただろ。情報部あがりだろ、あの人」

「あ?そりゃ、あれだ。"買った"ンだよ。幹部の誰かが…」

「ああ。なるほど。…っぷ、アハアハ。じゃ、何。A隊長は軍用の女ね?ハハハ、笑える」

「鬱さんだって買わねェと思うけどな。あんな風体じゃ…アハハ」



 冷たい廊下に響く声ひとつひとつが、やすりのように心に細かい傷をつけていく。Aは爪を真っ白になるまで握って、踵を返し自室へ向かった。

軍用の女。幹部の慰めということだ。ドキドキと嫌な鼓動が止まらなかった。


 あんな風体、というのは分かっていた。長いこと軍にこもりきりだったので、女性らしさに興味がなかった。髪は伸ばしてはいるものの1つにくくっているのみだし、顔にくまがあって、爪も割れている。数年前に買ったさらし同然のくすんだ下着も、女を意識しているとは言えなかった。


「…だ。だからって、どうしろっていうの…」


 Aはひとり部屋でクシクシ泣いた。自分が情けなくて、それが悔しくてたまらなくなった。でも、でも、どうすればいいのかわからなかった。だからことさらに涙を流して、忘れてしまおうとしたのだ。その日は夜まで、細々となき続けた。


明日の顔立ちを見て、またあの兵士たちの笑いの種にされると思うと我慢ならなかった。

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飼い主の姉(プロフ) - pnさんが夢主に狼狽する姿や描写が可愛くて好きです〜…!!🫶 無理しない程度に更新頑張って下さい! 応援しております (12月5日 14時) (レス) @page12 id: 5ee2b54502 (このIDを非表示/違反報告)
_maimai0101_(プロフ) - スキデス……夢主ちゃん頑張って〜〜〜〜!!!!生姜焼き太郎さんの世界観好きすぎます……!!!続き楽しみです🫶更新待ってます〜!!!!! (10月16日 17時) (レス) @page8 id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
田中(プロフ) - 読みやすくて、とても面白かったです。続きも楽しみです🫶🏻🫶🏻 (10月16日 13時) (レス) @page8 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:生姜焼き太郎 | 作成日時:2023年10月15日 11時

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